今年の共通テスト「地理」で出題!? ~★「工業立地論」とは★~
加藤学習塾ブログ
2025/02/04
みなさん、こんにちは。
★ウェーバーの工業立地論とは?★
工場をどこに建てるのが最も有利なのか
――この問題を考えたのが、ドイツの経済学者アルフレッド・ウェーバー(1868-1958)です。
彼は「工業立地論」を提唱し、工場の立地を決める3つの要因を示しました。
それが 「輸送費」「労働費」「集積」 です。
① 輸送費(原料と製品の運搬コスト)
工場は、原料を仕入れて製品を作り、それを市場(売り場)へ運びます。
このとき、輸送費が最も安くなる場所 に工場を建てるのが有利です。
特に、原料が重くてかさばるが、製品になると軽くなる 場合(例:鉄鉱石や石炭などの鉱山資源を使う工業)には、「原料産地の近く」もしくは「原材料の輸送に便利な港湾部」 に工場を置くと輸送費を節約できます。これを 原料指向型 の工業といいます。
反対に、原料よりも製品が重い 場合(例:飲料工場など)には、消費者の近くに工場を建てた方が輸送費が抑えられます。これを 市場指向型 の工業と呼びます。
② 労働費(人件費の安さ)
工場を動かすには、働く人が必要です。
もし安い賃金で働いてくれる人が多い場所 があれば、工場をそこに建てるとコストを抑えられます。
また、組立工業など、多くの人手や労働時間、工程がかかる工業も、人件費を低く抑えたいですね。
特に、労働力を多く必要とする繊維工業や電子機器産業 では、人件費の安い地域に工場を建てることが多くなります。
これを 労働指向型 の工業といいます。
③ 集積(工場が集まることでのメリット)
同じ産業の工場が集まると、部品や原料をすぐに手に入れられる ため、コストを抑えられます。
また、技術者や専門の職人が集まりやすく、効率よく生産できるようになります。
たとえば、自動車工場の周りに部品工場が集まるのはこのためです。
これを 集積の利益 といいます。
ウェーバーの工業立地論のまとめ
ウェーバーは、工場をどこに建てるべきかを決めるには、
①輸送費、②労働費、③集積の3つの要因を考えなければならないと主張しました。
この考え方は現在でも使われており、企業が新しい工場を建設する際の重要な判断基準となっています。
どうでしたか?
つまり、新規事業を立ち上げる際には、「原材料や製品の輸送コスト」・「必要な労働力」・「集積」といった様々な要素を考えなくてはいけません。
さて、共通テスト「地理総合・地理探求」の問題では、以下のように出題されました。
問い:(問題の趣旨のみ記載)
今から、ウェーバーの工業立地論のうち、「輸送費」を考えてみよう。
ウェーバーの原料指数とは、輸送費の観点から各種工業の立地指向を考えるための数値であり、次の式で計算される。
原料指数=(特定の産地のみで産出される原材料の重量)÷(製品の重量)
以下のア~ウの工業を①~③に分類せよ
※水と容器は、どこでも得られるものとする
ア:醤油製造
(大豆を煮て、小麦を混ぜ、食塩と水を加えて発酵)
イ:石油精製
(原油を、ガソリン・軽油・重油などに蒸留・分離する)
ウ:ワイン製造
(ぶどうをしぼり、その果汁を発酵・熟成)
①原料指数が1よりかなり大きくなる傾向
(製品にしたあとの方が軽く輸送費が抑えられるので、原材料産地の近くに立地する方が有利)
②原料指数がおよそ1
(原材料産地と消費地のどちらか近くに立地すべきか判断できない。人件費など、他の要素が立地条件に関与)
③原料指数が1よりかなり小さくなる傾向
(製品にしたあとの方が重く輸送費がかかるので、消費地の近くに立地する方が有利)
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【解答】
ア:醤油製造→③原料指数が1よりかなり小さくなる傾向
説明より、大豆・小麦に食塩・水を加えて発酵させるとあるので、製品の方が重たくなりますね。
よって、消費地の近くに工場が立地して、輸送コストを抑えるようにします。
関東では、千葉(全国シェア約4割)・群馬
中部では、愛知
関西では、兵庫県(全国シェア約15%)・香川県
九州では、福岡県
イ:石油精製→②原料指数がおよそ1
石油精製は蒸留・分離させていくので、それぞれの物質の総重量はほぼ変わらないですね。
よって、原材料費の輸送コストと製品の輸送コストはほぼ変わらないですので、他の立地条件が絡んできます。
ただし、日本の場合は、石油の生産地がほぼ皆無なので、輸入に便利な港湾部に石油精製工場が集積しやすいです。また、精製したのちに、ゴム・ペットボトル・プラスチック・ビニールなど、石油関連製品も製造した方が効率がいいので、関連工場も精製工場の近くに集積して、「石油化学コンビナート」が形成されます。
ウ:ワイン製造→①原料指数が1よりかなり大きくなる傾向