“時差ぼけ”はなぜ起きる? 体内時計の驚くべき仕組み
加藤学習塾ブログ
2025/12/11

海外旅行や出張で多くの人が経験する“時差ぼけ”。眠たいのに寝られない、日中に強い眠気がくる、胃の調子が崩れるなど、さまざまな不調を引き起こします。ではなぜ、体内時計はこんなにも頑固にズレを戻してくれないのでしょうか。
人間の体内時計(サーカディアンリズム)は約24.2時間と、実は地球の24時間より少し長いことが分かっています。脳の視交叉上核(SCN)が中心となり、光の刺激を受けて毎日微調整し、24時間に合わせています。しかし、飛行機で一気に数時間〜十数時間の移動をすると、この微調整では追いつかなくなり、体が現地時間とズレてしまうのです。
体内時計は「光」「食事」「活動」「温度」など複数の要因で調整されますが、その中でも特に重要なのが“光”。朝の光を浴びることで脳内のメラトニン分泌が止まり、体が「朝だ」と認識します。しかし到着時間が夜中だったり、機内で照明が不規則だったりすると、体は混乱し、リズムがリセットできません。
また、体内時計は“各臓器にも存在”しています。肝臓、胃腸、心臓などそれぞれが独自のリズムを持ち、これらは「食事のタイミング」を基準に調整されます。そのため、現地に着いたときに現地時間で食事をすると時差ぼけが早く解消されると言われています。
興味深いことに、時差ぼけは「東へ移動すると悪化しやすい」という特徴があります。これは体内時計が“伸ばす”ことは得意でも、“短くする”ことが苦手なため。たとえば日本からアメリカへ向かう西回りの移動は比較的楽で、逆にヨーロッパへ向かう東回りは強く時差ぼけが出る傾向があります。
体内時計は少しのズレでも大きな影響を及ぼし、睡眠、食欲、集中力、情動のバランスに直結します。つまり時差ぼけは単なる“眠気の問題”ではなく、体中の時計が「新しい時間」に合わせようと試行錯誤して生じる複合的な現象なのです。
