冬だけ「紙が乾燥でめくりにくい」理由|岡山の進学塾|加藤学習塾・個別指導塾

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冬だけ「紙が乾燥でめくりにくい」理由

加藤学習塾ブログ

2025/12/24

冬になると、プリントをめくろうとして指が滑ったり、ノートのページをつかみにくかったりする…。学校でも職場でも、この季節になると誰もが一度は経験する不便です。実はこれ、湿度と摩擦の関係が関わった“れっきとした科学現象”なのです。

まず理解したいのは、冬は空気が極端に乾燥する季節だということ。湿度が40%を下回ると、皮膚の水分は通常より速いペースで蒸発します。特に指先は皮脂や水分が少なく、乾燥の影響を受けやすい場所。そのため、冬の指先はサラサラとした状態になりがちです。この「指先の乾燥」こそが、紙をつかむ力を大きく低下させる原因です。

紙をめくる際に必要なのは“摩擦”です。摩擦は、接触面同士にわずかな湿り気があることで発生しやすくなります。しかし冬はその湿り気が奪われ、摩擦係数が大きく低下します。つまり、指の表面がすべりやすくなり、紙をしっかり捉えられなくなるわけです。紙をめくるときに、指に「ひっかかる感じ」が必要なのですが、それが乾燥によって消えてしまうのです。

また、紙自体も水分を失いやすくなっています。紙は植物繊維でできているため、湿度に応じて状態が変化します。湿度が高いとわずかに膨らみ、低いと収縮して硬くなります。冬場にプリントがパリパリした質感になるのはこのためです。紙が硬くなると、1枚ずつの“しなり”が弱まり、ページ同士がぴったり貼りついてしまい、めくりにくくなるというわけです。

さらに教育やオフィスの現場では、空調の影響も見逃せません。暖房が入った室内は、外気以上に乾燥します。特にエアコン暖房は湿度を奪いやすく、部屋の湿度が30%台に下がることも珍しくありません。これでは、指も紙も乾燥し、双方の摩擦が失われてしまいます。

このように、
・指の乾燥
・紙の乾燥
・室内環境の乾燥
という“三重の乾燥”が重なることで、冬の紙めくりトラブルが発生するのです。

では、対策はあるのでしょうか?

もっとも手軽なのは 加湿 です。室内の湿度を40〜60%に保つだけで、指先の状態も紙の扱いやすさも大きく改善します。また、指先の保湿ケアも重要。ハンドクリームを薄くなじませると摩擦が増えすぎて紙を痛めることがありますが、少量であれば扱いやすさが向上します。最近では教育現場やオフィスでよく使われる「フィンガーチップ(紙めくり道具)」も、乾燥シーズンに特に効果的です。

もう一つの意外なポイントは、指先の温度です。冷えていると皮膚がさらに乾燥し、動かしづらくなります。紙をめくる前に軽くこすって温めるだけでも、摩擦は大きく変わります。

冬の「ページがめくれない問題」は、小さな不便に見えて、実は科学と暮らしが密接に結びついた現象。教育的にも、「摩擦」「湿度」「物質の性質」を体験的に理解できる絶好の題材です。暮らしの中には、教科書の内容がそのまま現れる瞬間がたくさんあります。ページがめくりにくい…そんな小さな出来事から、科学の視点を広げてみると、いつもの冬が少し面白く見えてくるかもしれません。

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